2019年10月15日 更新

キャンペーン

夏の怪談コンテスト応募作品NO34_「耳成山で私が見たものは」

ぱどにゃんこ夏のキャンペーン 最恐「実話怪談コンテスト」応募作品を一挙ご紹介!

 

投稿者:【吉祥毬夏】

『耳成山で私が見たものは』

私は小学四年生から大学を卒業するまで奈良県の橿原市に住んでいました。近くには大和三山のひとつとして有名な耳成山があり、子供の頃の私は毎日のようにそこで遊んだものでした。
ある日、いつものように耳成山で遊んでいたところ、激しいにわか雨に見舞われました。

 

私と弟と友達の三人は慌てて中腹にある神社に避難し雨を逃れました。 神社の境内に座って、山の緑を濃くして降り注ぐどしゃぶりの雨を眺めながら、三人で歌を歌ったりして過ごしていたときのことです。友達がいきなり神社の裏手を指差し、

「なんやあれ!?」
と叫びました。


見ると、白い何かが頂上のほうから神社の裏手に下りてきたところでした。 私達は口々に、

「誰や!?」
と叫びました。


しかし結局その白い影は返事をするでもなく、こちらに来ることもなく、いずこともなく消えてしまったのです。実はこの話はいったんここで終わりです。

 

 

私はそのとき、その白い影のことを完全にただの【人】だと思っていたので、怖いともなんとも感じませんでした。そしてそれっきりそのことも忘れてしまったのです。

でも大人になってから、あるときその日の出来事を思い出し、いくつかの不思議な事柄に気がつきました。そしてにわかに怖さを感じるようになったのです。

 

一つ目に不思議なのは、白い影は頂上から神社の裏手にまっすぐ下りて来たのですが、そこには道がないのです。

神社の真裏は小さく切り立ったようになっていて、絶対に無理というわけではないのですが、晴れた昼間でも簡単には下りられません。私も子供の頃に一度だけそのルートを通ったことがありますが、ほとんど滑り落ちるようにして下りた覚えがあります。


二つ目に不思議なのは、白い影を目撃したときはどしゃぶりだったということです。

つまり、晴れた日でも下りるのが困難な場所をどしゃぶりの日に下りてくる【人】がいるだろうか?ということです。


三つ目に不思議なのは、白い影は突然現れたように見えたのと、いつの間にか消えてしまったということです。

それらのことに思い至って、もしかしたらあれは人ではなかったのかもと考えると、突然怖くなってしまいました。私にとって耳成山は里山のような存在であり、同時に気高き霊峰でもあります。懐かしい故郷であり、子供の私をいつも見守ってくれていた優しい神様でした。

そんな耳成山で私がたった一度だけ経験した不思議な話を書きました。

 

1 件

関連する記事 こんな記事も人気です♪

この記事のキュレーター

ぱどにゃんこチェック ぱどにゃんこチェック